雑記5
2009年 06月 14日
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#第二小説『すっぽん』、第一章の5節(1-5)のラスト部分が長らく気になっていたので、本日切った。
以下が、その切れ端である。
「そして、くすぐられて震える私10のおかげか、私152の記憶は揺すられ、重要な事実のかけらを飛び出させる。
同級生は実際は複数であった。それが入れ替わり立ち替わり、あるいは何日かに一人ずつ、休み時間の私にちょっかいを出した。
彼らは中学生特有のあり余る粗暴な、方向の定まらない力を、標的となった子供にぶつけてくる。やり返せば、待ってましたとばかりに力がより強く誇示され、標的でいる時間が長くなる。
逆に言えば、私10は理由を持つ一人の人間につけ狙われていたのではなかった。いや、だからこそ、私10はいじめられていたと言えるのだ。どこからいつぶつかってくるともしれない理不尽な力に、私10は常に身構えていなければならなかった。そうやって、きっと三年間を過ごしたのである」
私と並走してくれている方々も出来ればこの部分を切って、1-5をアップし直して欲しいのだが、それは絶対の要請ではない。
様々な版が出来ていくこともまた、この連載小説空間の特徴だからだ。
といっても、マルチエンディング的なテキストの散乱を私はイメージしているのでは決してない。
私は私にとって完全なバージョンを提示するつもりなのだ。そして同時に、バージョン違いの存在も受け入れるということである。
歴史的に言って、テキストは常にそのようにバージョン違いの渦の中にあった。そうでないのは、著作権という現代的な考え方に縛られて以降のきわめて短い時間の中の現象に過ぎない。
by seikoitonovel
| 2009-06-14 21:50
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