自由 


by seikoitonovel
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第一小説3-4

 
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3-4

        『BLIND』-4

 なだめる者は、相手の感情の起伏にぴったりと寄り添いながらそれを完全に統御しようと最大限の力を注ぎ、しかも事を成功裡に終わらせるまでにたいていは複数回の失敗を余儀なくされて傷つく。したがって俊子をなだめ終えた要は、すでにその短い時間の中で、ひとつの恋のプロセスを経験していたと言える。
 二年後、二人は結婚した。
 世界では同時革命が叫ばれていた。
 徹が生まれるのはさらに一年後、1971年のことだった。
 臨月になってもなお、俊子は金沢市内の街頭デモに参加した。やがて日本を代表する国際空港となるナリタではその年の2月22日、第一次強制代執行が始まった。延べ2万人の警官が、土地収用に反対する延べ2万人の地元農民や学生と衝突した。農民の中には立ち木に自らをくくりつけて抵抗する者もあった。俊子は代執行に反対しなければ筋が通らないと言った。要は筋そのものがのみ込めなかった。
 仕事に対する徹の真面目さは、この母から来ている、と言ってよい。そして父・要は最初に図書館で俊子に気づかなかったように、徹の中に厳然としてある岩めいた頑固さに気づかなかった。何事に対しても集中出来ずにぼんやりしている、という息子観はそのまま要自身にこそ当てはまった。
 だが、徹はただ母だけに似ていたのではない。「あらはばきランド」で徹が最も深く慕っていた上司、ここでは仮に園田吉郎(きちろう)としておくが、この園田の性格や風貌が父・要に大変よく似ていた。けれど、徹はその誰にとっても明らかな事実に気づかなかった。まるで父のように。
 奇妙なことに、この父によく似た男・園田吉郎(45歳)こそが、徹が恋に落ちるきっかけを、本人もそうとは知らぬまますでに作り出していたのであった。
 園田はまた、「レイン・レイン」を作った人物でもあった。


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by seikoitonovel | 2009-04-04 22:24 | 第一小説