自由 


by seikoitonovel
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第一小説1

 
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 ただいま過分な御紹介にあずかりました、デュラジア大学人間科学研究所・佐治真澄でございます。
 むしろジョルダーノ先生の長年にわたる御研究こそが我々恋愛学者の導きの星であり、この盛大なうちに幕を閉じようとしております『20世紀の恋愛を振り返る十五カ国会議』の締めくくりにふさわしいと考えます。けれども、最高賞を受賞した国の代表が最終報告を担当するという、かねてからの取り決めでございます。どうか御静聴ください。
 さて、涙とともにパンを食べたものでなければ人生の味はわからない、とは御存知のごとく大文豪ゲーテの言葉であります。苦渋と励ましに満ちたこの言葉の主こそ、これまた言うまでもなく恋多き人物でございました。
 であるならば、皆さん、先に挙げた格言を我々はこう言い換えてよいのではないでしょうか? 恋愛とともにパンを食べたものでなければ人生の味はわからない、と。
 ……拍手、おそれいります。事実我々は、会期初日の7月12日夜、山梨県民文化ホール内で行われましたレセプションパーティの席上、トルコ芸術音楽大学名誉教授・ユルマズ博士から、会議の名前自体を『20世紀を振り返る十五カ国会議』と短く変えてしかるべきではないか、との御意見もいただいたのです。
 それでは若干ぼんやりとした会議にならないかと危惧を示した我々に対して、ユルマズ博士が悠揚迫らず答えられたお言葉は大変印象的でありました。
 恋愛を振り返ることは、そのまま世界を振り返ることだ。
 ユルマズ博士はそうおっしゃったのです。
 会議の名こそ変わりませんでしたが、博士、まさしく我々は7日間をかけて、20世紀を総括したのであります。20世紀の歴史を、人間を、言葉を、仕草を、そして何より性そのものを。
 博士にどうぞ大きな拍手を……博士、お座り下さい。博士。
 それでは、お配りしたレジュメにしたがって、きわめて簡潔に、今回『20世紀の恋愛を振り返る十五カ国会議』において、最高賞を獲得した日本の恋愛事例をおさらいしたいと思います。
 まず、一人の男がおりました。
 
 

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by seikoitonovel | 2009-03-01 00:40 | 第一小説