父1-1
2009年 04月 09日
第一章
1-1
出生
1930年(昭和5年9月11日)。長野県諏訪市岡村北沢で父友幸、母よしのの6男として出生。
長男源蔵(1920年生・大正9年)、次男治幸(1922年生・大正11年)、三男巻男(1924年生・大正13年)、四男計男(1926年生・大正15年・昭和元年)、五男武男(1928年生・昭和3年)の兄達は皆健康であった。
母親よしのは2年に一人づつ生みつづけてきたのである。長男源蔵と私とは10才違いであった。私が小学校に上がったときには源蔵はすでに尋常高等小学校も卒業して家業に従事していた。兄弟は兄弟であってもこの差は大きい。私は幼少時に源蔵と親しく話を交わしたという記憶はなく、恐ろしく力の強い頼もしい兄貴という印象でしかない。
父の家業
私が生まれた頃には牛乳処理販売業を営む、○井(井の○囲い)伊藤牛乳店といい、その頃の上諏訪の同業者は大手町の○中(中の○囲い)という牛乳処理販売店が一軒あるだけであった。最初は5頭ばかりの乳牛を家の庭で飼い、母が搾乳していたことを朧気に覚えているが、それはわずかな期間だけだったのではないかと思う。その後は乳牛農家(せいぜい5頭位しか飼っていない小規模農家)から牛乳を集めてきてそれを熱処理し一本一本一合ビンに詰め宅配した。最初は販売先の開拓・集金など父が行っていたようだが、父は源蔵の高等小学校の卒業を待ち構えていてもっぱら自分の手足のように使った。
家業は父母と源蔵が支えていたといっていい。
by seikoitonovel
| 2009-04-09 22:05
| 第三小説「思い出すままに」